秘密基地
大きな樹の上に作られた秘密基地。
その場所を見つけたのはケロロだった。
木登りをしている時に上手い具合に入り組んだ樹の股を見つけ、そこに板を敷いたらちょうど良いんじゃないか。という思惑が当たった。
どこからかかっぱらってきた板を敷くと、そこは樹の上で思いがけず三人が並んでゆとりあるスペースになり、じゃこんどは屋根をつけよう、屋根をつけたら、壁を作ろう。となり、今では立派な基地となっている。
おまけにこの樹は大きくて葉が良く茂り、外からでは基地の存在はまるでわからない。
ゼロロ以外一人部屋のなかった二人は、「自分の部屋」に狂喜乱舞し、もちろんゼロロも三人だけのその秘密の空間に狂喜し、枕やお菓子、漫画を持ち込んでは毎日そこでたむろっていた。
秘密基地。と口にするだけでドキドキして、嬉しくてたまらない。
小訓練所での訓練が終ると、目配せして、「じゃ、あの場所で」なんてもったいぶって言ってみたりする。
秘密を共有できるのはこの三人だけで、この場所は誰にも教えない。だとか、もし敵の侵略を受けたら断固戦う。などの厳しい掟を作ったり。ごっこ遊びに興じたり、お菓子を食べたり、寝たり、じゃれたり。大人が煩く言わないここは最高のパラダイスだった。
毎日一緒にいたって飽きない。もっともっと一緒にいたい。
もうとにかく、三人が一緒にいられるというだけで楽しかったのだ。
いつまでも三人で仲良くできると信じていた。
今までもずっとそうだったし、これからもずっと。
今日も日が暮れるまで一緒に遊んで、秘密基地から沈んでいく夕日を見る。
なんで一日が終るのはこんなに早いんだろう? まだまだ遊び足りない。友達と別れるのは嫌だ。
そう思っても、否応なしに日は沈む。
それをケロロは不条理だと思った。
「俺たちさぁ……」
ケロロが沈んでいく夕日に照らされ、茜色に染まりながら口を開いた。
「ん?」
ケロロの後ろから声がして、ギロロが近づく。ケロロと並んで、沈んでいく太陽を眺め、この楽しい時間が終るという信じられない不条理を一緒に味わった。
ゼロロは今日いない。体が弱いゼロロは、今日は病院に検査に行くと言っていた。
明日は会えるかな? とケロロは思った。
じゃ、また明日。
その一言が言えない。
ギロロと別れたくない。そもそも、どうして別れなければいけないのだろう。
こんなに好きなのに、こんなにお互い一緒にいたいと思っているのに、どうして別れなければいけないのだろう?
不条理すぎる。
また明日会えるから。というのは、今のケロロにとって納得できる理由ではなかった。
「友達じゃん」
ギロロに向かってそう言うと、ギロロが急になんだという顔をした。
「ああ」
それでも深く頷いてくれたギロロに、ケロロの中で何かがはじけた。
離れるなんて、許さない。
「キスってさ、好きな人同士でするんだって。俺たち友達だから、好き同士じゃん?」
思わず早口になった。ギロロは、意味が判らないという顔をしているが、ちょっと考え、友達だと。ケロロのことが好きだと返事してくれた。多分、自分が判る所だけ返事をしたのだろう。
ギロロ、やっぱり知らないんだ。
ケロロの胸がドキンドキンと大きく脈打つ。かぁっと顔が赤くなるのが自分でも判る。
俺、ギロロ騙そうとしてる。
「だから、いいよね?」
期待と罪悪感を胸にそう言ったケロロの顔が近づいて来る。
切羽詰って緊張したケロロの顔を、ギロロがきょとんと見ている。
目を閉じたケロロの顔が触れそうなほど近くに来た時、ギロロにもケロロが何をする気か判ったが、ケロロの顔があまりにも切なくて、避ける事ができなかった。
それに、嫌じゃない。
唇を合わせながら、ギロロもそっと目を閉じた。
唇と唇が触れた瞬間、ぞくっと快感が走る。
唇を合わせるだけなのに、なぜこうも甘いのだろう。胸が甘く締め付けられ、体の芯がじんじんする。
しばらく触れるだけのキスをして、やがて遠慮がちに触れていたケロロの唇がそっと離れる。
ギロロも目を開け、顔を見合わせると、ケロロは目を潤ませて顔を赤くしていた。
ケロロがもっと欲しくて、今度はギロロの方からケロロに口付ける。
気持ちいい事をしたい。という本能に従い、ギロロはケロロの唇を貪った。
「あ……っふ、ギロロ……、んぁ……」
甘いため息を漏らし嫌々と弱々しく身をよじるケロロを抱きしめて離さず、ギロロは自分の好きなだけ貪欲にケロロを貪る。
キスの愛撫は稚拙だったが、ギロロが角度を変えて何度も口付け、唇のふちをなぞるように舌で舐められると、びりびりとケロロの体に快感が体中を走った。
なにこれ!?
こんなの知らない。
ケロロは恐怖さえ覚えたが、その快感を、離れろと命じるケロロの理性とは裏腹に、本能はもっともっとと求めている。
ギロロは、その恐怖は微塵も感じてないらしい。素直に自分に従い、ケロロを貪る。
ギロロが夢中で自分を欲しがっている。
そう思うと、凄く満たされた感じになって頭がくらくらとして、キスの快感と相まって頭が真っ白になりそうだった。自我を押しつぶしそうな幸福感、意識を白く塗り替える快感に嵐のように翻弄される。
ようやく満足してギロロがケロロを離すと、ケロロががくっと足元に崩れ落ちた。
涙をぽたぽた流し、はぁっ、はぁっと肩で大きく息をついている。
「な!? 大丈夫かケロロ!?」
「ギロロおめーそれは反則だろ……」
涙目になったケロロが赤い顔でギロロを睨み、ギロロの方も意味は判らないけれど急に恥ずかしくなって真っ赤になった。
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