今日のエビス 第一条









 傷も癒え、やっと退院という時。

 窓口で清算をしている左近裁判官補佐を五嶺様と待ちながら、俺はふと大きな鏡に俺と五嶺様が映ってるのに気がついた。

 鏡に映った、五嶺様と俺。

 すらりとした五嶺様のお姿と、ジャガイモ体型な俺。

 見目麗しい五嶺様と、ブ男な俺。

 死にかけた会社をもつ五嶺様と、死にかけた体を持つ俺。

 頼りないような、たくましいような。

 草野と六氷を笑えねぇ……。つーか俺達の方が変じゃねぇか?

「どしたい?」

 俺が、鏡の中の二人をじーっと見つめているのに気がついた五嶺様が俺に話しかけてきた。

「あ、いや、客観的に俺と五嶺様ってどうみえるのかなって……」

 俺が口ごもりながら言うと、五嶺様はなんだそんな事かとでもいいたそうな顔をして、すぐに口を開いた。

「陰険と達磨」

 …………俺はなんて返事をすればいいのか。

 幸い五嶺様は返事は期待していないらしく、そのまま黙りこんだ。

 なんか間が怖い。急げ左近、急いでくれ。


 鏡に映った、五嶺様と二人。

 これからも二人で生きていけることに俺は感謝した。



                                               終

 

20060701 UP

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