Your smile









 上空を報道ヘリが飛んでいる音が聞こえる。

 家電売り場のテレビに、自分達がいるショッピングセンターの外観が映されているのを透き通った緑色をしたケロン人の子供が見上げた。

 隣にいる子もそれを見たのだろう。つないでいた手を不安そうにぎゅっと握ってきたので、勇気付けるようにぎゅっと握り返す。

 テレビから視線を戻し、偵察を続ける。

 先ほどテレビに映っていたショッピングセンターの中は、窓ガラスは無残に割れ、ちり一つなく掃除されていた通路にはストアーから飛び出したマネキンが転がっている。

 その場にいたケロン人は一箇所に集められ、その周りを銃を持った敵性宇宙人達が囲んでいた。

 先ほど見たTVでは、刑務所に収監された仲間を釈放する事と、彼らの母星へ帰るための宇宙船の要求があったと報じていた。

 状況を把握すると、二人はおもちゃ売り場へと場所を移す。

「オイラ達以外は、みんなあそこみたいやな」

 テロリストに占領されたショッピングセンターのおもちゃ売り場。

 そんな絶望的な場所にいながら、そう言った声はどこか楽しそうにわくわくしている。

 すでに、二人の手には、おもちゃではあるが改造しそこそこの破壊力がある銃が握られ、売り場にはそこかしこにあるものを利用して、入念にトラップが仕掛けられている。

「なぁ、チロロ」

 振り返り、小声で、エメラルドグリーンのケロン人の子が隣の子に話しかけた。

「なに、カララ?」

 心配そうな声で返事をしたチロロの方をカララが振り返り、キラキラと目を輝かせる。

 その目に一瞬見とれ、チロロは今の状況を忘れる。次の瞬間、悪戯っぽくカララが笑った。

「面白いと、思わへん?」

「ど、どこが!?」

 相方の言葉にチロロが驚愕していると、カララが乗ってくれなかったチロロに少し面白くなさそうに唇を尖らせたが、気を取り直したように囁く。

「この間習ったやん。小訓練所で、対テロ戦のやりかた」

「だ、だからって」

 突拍子も無いカララの言葉に、チロロは頭が痛くなりそうだった。ここは、テロリスト達に見つからないように隠れているか、もしくは脱出するのが賢明だろう。捕まらないだけでも大変なのに、カララは敵をやっつける。と言いはっているのだ。

「この状況でな、オイラ達があいつら倒したら、褒められるにきまっとるがな〜〜」

 ひそひそと耳元で囁かれるカララの声は、作戦が成功する事を露ほども疑っていない。

「エリートカウンターテロリストとして皆に褒められまくりや!」

「でも、これって訓練じゃないし。第一あれは野外訓練」

 自信満々のカララに対し、チロロは、カララの勢いに押されて弱々しく反対する。

「ちょっと……、怖いよ」

 ぽつりと呟いて、チロロは困ったように上目遣いでカララを見る。

「オイラはチロロに一緒にやって欲しいけど、チロロが嫌やったらええ」

 弱気なチロロの言葉に、カララはきっぱりと言った。

「止めるの?」

 ほっとしてそう言ったチロロの体が、カララの返答を聞いて固まる。

「そんな訳ないやん

「え……?」

「一人でやる」

「ダメ!」

 反射的に思わず大きな声を出し、慌てて自分で自分の口をふさいだ。

 見つかったかと二人でびくびくしていたが、あたりは静けさを保っている。何とか見つからなかったと、ほっとしたように二人が身じろぎした。

「ボ、ボクも一緒にやる!」

「その気になった?」

「違うよ」

 うふふ。と嬉しそうに笑うカララに、ぶんぶんと頭を振りながらチロロが必死になって言う。

「カ、カララ一人で行かせられないもん」

 必死のチロロの言葉に、カララがチロロを不思議そうな目で見る。

「カララは、ボクが守るから……! ボ、ボクの方がカララより弱いから、こういう事言うの変だけど、絶対守るから!」

「何言ってるんだよ、チロロ」

 力んで言うチロロに、カララが呆れたように口を開いた。

「無理せんでええ。チロロはチロロのままでええ。なんだろうと、オイラの相方はチロロだけなんやから」

 カララがそう言うと、一瞬チロロが黙り込んだ。少し泣きそうになってしまったのを、必死で堪える。

「ねぇカララ……」

「何?」

 意を決して囁いたチロロの言葉に、カララが上の空で返事をする。

 近づいてくる靴音が聞こえる。

「大きくなったら、ボクのお嫁さんに……」

「しっ!」

 言いかけたチロロの声は、カララにさえぎられた。

「おったで」

 カララが心の底から嬉しそうにチロロに笑いかけ、言葉をいえなかったチロロが残念そうな顔をする。

「いち、にい、さん……。なんや三人か。クク、楽勝や」

 くるりと振り返り、カララが笑った。

 その笑顔が、チロロの目に焼きつく。


 世界で一番危険で、可愛くて、大好きな笑顔。


「頼りにしてるで!」

「うん!」

 カララの一言で、チロロの体に勇気がわいてくる。なんでもしてみせるという気になる。

「行くで、チロロ!」

 飛び出していったカララの後を、チロロが追った。




ENDE



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