Love Communication








「あ〜、ボクのチョコボールがぁ〜〜」

 泣きそうなタママの声に、ケロロがタママを振り返った。

 ケロロの隊長専用ベッドの上で、お菓子を食べながら漫画を読んでいたタママが、かけ布団を持ち上げて中をのぞきこんでいる。

 そのタママの後姿を見ながら、多分、手から転げ落ちたチョコボールが、布団の中に潜ってしまったのだろうとケロロは想像した。

「タママー、我輩のベッドの上でお菓子食べないでねって何度も言ってるでありま……」


 苦言を呈しようとしたケロロの声がぴたりと止まった。


 タママは持ち上げた掛け布団のなかに四つん這いになってごそごそと潜り込み、ケロン人独特のキュートなお尻を外に突き出している。

「あうー、どっかいっちゃったですぅー」

 布団の中から、お菓子を探しているタママのくぐもった声がしたが、ケロロの耳には入っていない。


 布団から突き出した、尻尾付きのつんと尖ったお尻が、まるでケロロを誘うように左右にふりふりとしている。


 なんでありますかこの扇情的なビジュアル……ッ!

 何その尻尾我輩誘ってるの!?


 その腰抱えて、ぐいっと上に持ち上げて、おもいっきり、おもいっきりやっちゃいたい!


 抑えられないほど急激に沸き起こってきたその欲望にケロロ自身も驚いた。

 久しぶりに感じた欲情に戸惑う。

 タママを受け入れてから、忘れかけていた感情や欲望が蘇り、新しい自分に気がつく。良い傾向なんだか悪い傾向なんだか分からないが、とにかく今はタママが欲しくて仕方がない。




「あったぁ!」

 もぐっていた布団の中から頭を引き抜き、チョコボールを摘んだ手を誇らしげに上げながら満面の笑顔でタママがそう言った。

 次の瞬間、複雑な表情で自分をじーっと見つめているケロロにはっと気がつき、しゅんとうなだれる。

「軍曹さん、ごめんなさいですぅ。チョコボールなら汚さないからいっかなぁって油断してたですぅ」

 ケロロは違う思惑でタママを見つめていたのだが、タママはてっきり怒られるものだと勘違いして落ち込んでいる。

「あ、いや、それはもういいであります」

「タマ?」

 ケロロの様子がおかしいのに首をかしげるタママが、きょとんとした顔でケロロを見た。その無邪気な表情に、ケロロが湧き上がった突然の欲情をどう伝えようかとうろたえる。

「なんですぅ?」

「あ、いや、ね?」

 ね? と言われても判るはずも無く、タママは不思議そうな顔をするだけ。

「変な軍曹さん」

 煮え切らない態度をとるケロロを横目で見ながらタママがそう言って、チョコボールを口に放り込んだ。そのまま漫画を読むのを再開しようとすると、ケロロの手が漫画を抑える。

「いやいやいや。漫画読むのは終わり! 終了!」

「はぁ?」

「あのー、えーとね」

 よっぽど恥ずかしいのか、ケロロは顔をほんのり赤くしてもじもじとしている。タママの大きな目でじっと見つめられると、ますます言い出しにくい。


「……我輩、したいんであります」

 恥ずかしさを堪えてようやく小さな声でそう言う。

「聞こえないですぅ」

 ケロロの精一杯にもタママは無邪気な顔で容赦なくケロロに言い、ケロロはますます赤くなった。 

 

 ぐぅっ、この天然鬼畜めが……。容赦なく羞恥プレイしやがってであります。

 こいつ、いつもはすぐえちぃことしようとするくせに、なんでこんな時だけ鈍いんでありますか!?

 

 ケロロの頭の中で、鈍いタママを責める気持ちと欲望がぐるぐると渦を巻く。


「し、しよう!」

 ケロロが勇気を振り絞っていったストレートな言葉が、タママめがけて投げられる。

「何をですかぁ? ガンプラで遊ぶですぅ? いいですよぉ」

 タママがケロロを見て、にっこりと笑った。

 ストレート、受取人不在。


 こいつ、この期に及んでまだ言うでありますか!?

 気付け! 気付け、気付け、我輩から言ってやってるんだからいいかげんに気付け!

 

 いらいらと欲情とで沸騰しそうになりながら、なんとか大人のプライドと理性を総動員させて表面上は何気なく振舞う。自分から欲しいと言うのは嫌だという妙なプライドと羞恥心が邪魔して、なかなかうまく言い出せない。


「いや、ガンプラ……、じゃなくてね、もっと大人……っていうか、気持ち良い事って言うか……。いや我輩おっさんくさぁ……」

 微妙な発言の上、通じるどころか、ますます不思議そうな顔をするタママを見て、ケロロが自分にちょっとげんなりした。

「……やっぱり変ですぅ。言いたいことがあったらはっきり言って下さいよぉ」

 漫画を手から放し、ケロロに向き直ったタママが、困ったようなあきれたような声を出すと、ケロロが真っ赤になって頭を抱える。

「ああっ、これだけは幾つになっても恥ずかしくて言えないであります!!」

 

 「えっちしたい」

 その一言が言えずに、なぜここまで苦しまなければいけないのか。

 いつもいつも、タママから誘ってくるのを待って自分から言うのを怠っていたのに罰が当たったのでありますか……? とらちもないことを思う。


 くそっ、くそっ、我輩の意気地なし! おたんちん!

 なんでそんな簡単な一言が言えないの!?


 言え、言っちまえ。

 言えば楽になるであります……。


 内心ですごい葛藤が繰り広げられ、ハァーハァーと荒い息を吐き、瞳孔が開いたケロロをひょいとタママが覗き込む。


「軍曹さん顔真っ赤ですぅ」

「ええい、実力行使であります!」

 声とともに、がばっとタママを押し倒す。

「わぁっ!」

 ケロロの不意打ちに、驚いた顔のまま自分を押し倒したケロロの顔を見上げると、切羽詰ったケロロの顔が自分をのぞきこんでいた。

「我輩、タママと、エ、エッチしたいであります!」

 顔を真っ赤にして、必死に言うケロロにタママの胸がどきんと高鳴った。

「い、いい?」


 おずおずとタママの返事を求めるケロロをすごく可愛いと思う。


 軍曹さんが、ボクを欲しがってくれてるですぅ……。


 そう思うと、求められる幸せに、心のがじんと熱くなる。

 大好きですぅ! とケロロの首っ玉にしがみつきたいが、もうちょっとだけケロロのほうから求めているというこの幸せな状況を味わっていたい。


「良いも何も……。ボクもう押し倒されてるですぅ」

 タママも頬をほんのりと桜色に染め、恥ずかしそうに目をそらして、拗ねているような甘えたような声で小さく言った。


「いいよね?」

 吹っ切れたのか、うって変わってすっかり大胆になったケロロが、わざとタママの顔を覗き込みながら聞く。

「聞かないで下さいよぉ……。ボクだって恥ずかしいですぅ」

 んもう、軍曹さんてば黙ってやっちゃえばいいのに……。と思うタママの気持ちを十分分かっていて、ケロロが口を開いた。

「タママもしたい?」

「もうー、軍曹さん自分が言ったからってボクにも言わせようっていうんですか? 意地悪ですねぇ」

 わざと自分を困らせるようなことを言って楽しんでいるケロロの思惑を悟り、タママは抗議したが、ケロロは何も言わずタママの返事を待っている。


 タママが自分も欲しいと言い出すのを待っているケロロの瞳が、じっと自分を見つめている。


 言わされるのは悔しいですぅ。


 でも。

 でもぉ……。

 

 でも、幸せだからいいですぅ。

 

「ウン……」


 ケロロの瞳と自分の気持ちに逆らえず、タママはこくんと頷きながら小さく返事をした。

 タママに自分の求める返事をさせて、満足そうな顔をするケロロを見て、タママも満たされる。


 キスをしようと近づいてくるケロロに、タママが幸せな気持ちのままそっと目を閉じた。





ENDE



20050722 UP


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送