意外とLOVE











「ねー、ギロロ〜」

緑色のクッションをこれ見よがしに手にし、ケロロが銃を磨いているギロロに擦り寄る。


珍しくクルルもタママも居ず、部屋に二人きり。


ケロロはさっきから何か言いたそうにしていたのだが、作っていたガンプラ「ギャン」が出来上がったのを機に行動に移すことにしたらしい。


 嫌な予感がする……と瞬間的に思ったギロロのカンは当たっていた。


「いいでしょ〜、今夜」

ケロロがそう言いながら、ギロロが下に敷いて座っていた赤いクッションをぐいっと強引に引っ張り出した。

不意を付かれて、ギロロがころんとひっくり返され、したたか後頭部を打つ。起き上がりながらケロロを睨むが、ニコニコと下心満載の笑顔のケロロは全く意に介さない。


ケロロとギロロのクッションには、片面に「YES」と「NO」がそれぞれプリントされている。

最初ケロロからこれを渡された時は意味も判らず使っていたのだが、そのクッションの使い道を知った時、こんな不埒な物使えるかと一度は捨てようと思ったものの、そのクッションとしての使い心地のよさに捨てられずにいる。

この赤いクッションはケロン人のなだらかなカーブを描くお尻に優しくフィットするのだ。


ケロロがにやにやしながらさっきまでギロロが座っていた赤いクッションを「YES」にする。

もちろん自分が手に持っている緑色の自分のクッションも「YES」だ。


「断わる」

 銃磨きを邪魔されたギロロが不機嫌な声でそう言い、「YES」にされた赤いクッションを「NO」の方にひっくり返した。

 その途端ケロロが爆発する。


「何ででありますか!」

 信じられない! といったようにくわっと目を見開き、大罪人を見る目でギロロを見る。

「たまにはいいじゃん、けち、赤ダルマ!」

 理不尽な事をギロロに言いながら駄々っ子のようにじたばたする隊長に、ギロロの額から汗が流れる。

こんな奴が隊長でいいのか……という思いにかられていると、ケロロが悔しそうな顔でギロロを指差した。

「どーせ暇なくせに!」

 図星を付かれ、思わずウッと顔をゆがめる。だが、それとコレとは話が別だ。


「今夜は暇じゃない!」

「じゃなにしてんの!?」


 売り言葉に買い言葉で言い返してはみたが、実際暇なので言葉に詰まる。

 する事といえば日課の銃器の手入れか射撃の訓練くらいか、焚き火で芋を焼くくらいだ。


「匍匐前進……」

 暫しの沈黙の後、うめくようにギロロがそう言った。口八丁手八丁のケロロとは違って、ギロロにはこれが精一杯。


「じゃあさ、匍匐前進してていいからやらせて?」


 ケロロの発言に、ふと浮かぶ白昼夢。



 ギロロの首筋に伝う汗をついとケロロが舐めた。

 敵に発見されぬ様低く身を伏せ、秘密裏に目的地へと近づく訓練。その訓練をしているギロロの目がかっと見開かれ、背にケロロを乗せたまま、腕の力だけでぐいと前へ進む。

 目が血走っているのは、上に載るケロロの重さだけではない。

 前へ行こうとする力強い動きは、ケロロによって中断されがちだった。

 些細な動きも、自分の中にいるケロロのせいで激しい快感に変わる。

「うァ……」

 戦場に似つかわしくない、甘くかすれた呻き声。

 己をギロロの体内に侵入させながら、それだけでは飽き足らず、ケロロの手がギロロの体を探り、肩を優しく甘噛する。

「うふふ、ここ、こんなになってるでありますよギロロ。まだ我慢するんだ、よくやるねぇ……」


 匍匐前進する自分の上に乗っかるケロロ。快感に喘ぎながら前へ進む自分。


 ウィンクしながらそう言ったケロロのセリフを一瞬リアルに想像して、ギロロの魂が抜けかける。


「なんか想像したらエロくな〜い?」

 ケロロもなにか想像したらしく目を細めてそう言ったが、二人の顔は笑顔と暗い顔と真っ二つに分かれている。

「……嫌だ」

 ギロロがそう言うと、ぷうとケロロが頬を膨らませた。

「いいじゃんいいじゃんいいじゃん」

「だめだだめだだめだ!!」

 二人でそう言いながら、凄い勢いでクッションを「NO」から「YES」へ、「YES」から「NO」へ高速でひっくり返す攻防が行われた。


レベルは高いがくだらない戦いの末、ぜいぜいと荒い息をつきながらギロロによって「NO」にされた赤いクッションを敵のように睨みつけていたケロロは、最後には床に寝転がりじたばたと暴れだした。

「したいしたいしたい〜。もー我輩一人寝の夜は飽きたの! 我輩ギロロが欲っしい〜であります!」

 何気なく熱烈な愛の言葉を言いながら駄々をこねるケロロに、ギロロの体温がみるみる上昇する。

「ばっ、馬鹿、貴様何を大声で言うか!」

 恥ずかしさに顔を赤らめ、思わず自分も大声になってしまったギロロを、ケロロがじっと見る。

「だって欲しいんであります」

 この上なくストレートで正直なケロロに、ギロロがたじろぐ。


 じっと自分を見つめるケロロの黒い瞳に吸い込まれそうな気がした。


「我輩の事、好きでしょ、ギロロ。いいじゃん、許してよ」

 ずっと昔から聞き覚えのある、ふて腐れたように言うケロロの口調。

 ギロロに甘えているのだ。


「変わらんな、貴様は……」

 幼い頃からの同じパターン。我が侭を言うケロロと、結局それを許してしまう自分。

 それに気が付いているが、ギロロはそれでもケロロを突き放す事が出来ない。


 惚れた弱みか……。

 心の底でそう思うが、絶対に口には出さない。ギロロのせめてもの意地だ。


「……判った」

 諦めたようにそう言い、ため息をつきながらギロロが赤いクッションを「YES」の方にひっくり返すと、ケロロの表情がぱっと明るくなった。

「うっひょーマジで、イエーい、やった〜〜」

 飛び上がりながら、「YES」の赤いクッションを持って部屋中を駆け回る。多分、気分は「勝訴」と書かれた紙を持って裁判所の外を走り回る人だろう。

 ケロロのはしゃぎぶりを悪くない気持ちで見守っていたが、ケロロがそのまま部屋を飛び出したのを見てギロロが慌てた。部屋の中だけでは空き足らず、家中を駆け回るつもりらしい。

「こ、こらっ、どこへ行くか貴様!」

 ギロロが慌てて後を追うと、ちょうど通りかかった冬樹にケロロが飛びつく所だった。


「軍曹どうしたの? 嬉しそうだね」

「冬樹殿我輩やったよ〜!」

 感涙しながら冬樹にそう言うケロロは、誉めて欲しい子供そのものだ。

「いや今からヤる? でもやった? ん、どうでもいいであります。皮がむけるほどお風呂で洗いぃ、歯茎から血が出るほど歯を磨きっ!」

 自分の世界に入り込み、リビドーをおもいっきり溜め込む。

「決戦は今夜であります!」

 びしいっとポーズを決めたケロロを冬樹がニコニコしながら見守っている。

「なんだか判らないけどよかったね。がんばってね」

「おお冬樹殿、励まし痛みいるであります。冬樹殿の応援が無駄にならぬよう、我輩今夜は獣になりきる所存であります!」

「ならんでいい!」

 一生懸命今夜の抱負を語るケロロに怒りの飛び蹴りを食らわせたギロロが、顔を真っ赤にしながら叫んだ。

「恥ずかしいはしゃぎ方をするな! だから嫌なんだ!」

 ケロロの肩をつかんでゆさゆさと激しく揺らすと、ガクガクとケロロの頭が揺れる。

 ケロロの方は、いつもなら即座にやり返して泥沼になるのだが、今日はよっぽど機嫌がいいのか、そんな事をされながらも半目のにや〜っとした笑顔を絶やさない。それがまたギロロの癪に障る。


「軍曹と伍長ってさ」


「ゲロ?」

「なんだ?」

 じゃれあう二人をニコニコしながら見ていた冬樹がそう言うと、二人が動きを止めた。冬樹の次の言葉を待つ。


「仲いいよね」

「意外とラブ! なんであります」

 にかっといい笑顔をしながらケロロが嬉しそうにそう言うと、ギロロがゴン! と拳でケロロの頭を殴ったが、どうやらそれは照れ隠しだったようで否定はしなかった。


 その夜何が起きたかは、二人の秘密……。


……なのだが、クルルなら知っているかもしれない。





ENDE



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