Long Day& Good Night









「いるんだろ、入るぞ!」

 ギロロが怒鳴り、クルルズラボの入り口が開くやいなや、ずかずかと中へ入り込む。

 その後ろを、ケロロの緑色の足が追った。


「クルルー、終ったでありますかー?」

 奥に向かってケロロが呼びかけると、キィと軽い音を立てて回転式の椅子に座ったクルルが振り向いた。

「いいところに来たぜぇ、隊長……。最終処理が今終ったばっかりってところだ」

 そう言ったクルルの顔は寝不足と疲れでやつれ、どことなく動きが怪しい。

 ガルル小隊が行った惑星麻酔の誤差を調整するために、クルルは不眠不休で一人作業に当たっていたのだ。疲労も限界に来ているに違いなかった。

「おお! さっすがクルル曹長であります。早速最終報告を」

 喜びを満面に浮かべケロロが言うと、クルルがキーボードを叩く。

 世界地図が正面の大きなディスプレイに映し出された。ケロロとギロロがクルルの説明を今か今かと待つ。

「ク〜ックックック、苦労したぜぇ」

 もったいぶったようにクルルは笑い、あちこちで小さな点が光る世界地図の意味を説明してもらおうとするケロロが説明をせかす。

「んで、結局何とかなった?」

「ああ……、俺が……」

 言いかけたクルルのせりふが、途中で途切れた。


「…………」

「…………」

「…………」


 クルル、沈黙。


 クルルの説明を待っていたギロロとケロロがしばらく黙っていたが、やがて我慢できずにケロロが口を開く。

「俺が何?」

「ク〜ックックック、ク〜ックックック」

 ケロロの耳に入ってきたのは、クルルの息と小さな声。

「いびき?」

 ケロロとギロロ、二人で顔をあわせた後、ケロロが大声を出す。

「こらぁ! クルル曹長!」

 その声に、びくっとクルルの体が動き、んあ? とクルルが目を覚ます。

 やっぱ寝てたんでありますか!!

 ケロロはそう突っ込みたかったが、クルルには相当無理をさせている。おとなしくクルルの説明を待った。

「悪ィ……。寝てた。立って話す」

 クルルはそう言って立ち上がり、再び沈黙した。


「……………………」


「寝てるな」

 ギロロが言うと、ケロロが子供のように地団太を踏んだ。

「もお〜、気になるのにィ」

「疲れてるんだろう。無理も無い。寝かせてやれ」

 ギロロはそう言って、立っているクルルをまるで荷物のように無造作に肩に担ぎ、ベッドへ運ぶ。

 無防備に眠るクルルをベッドへと横たえると、ギロロはぶつぶつ文句を言うケロロを促してさっさとラボの出口へ歩き出した。




 ギロロが食事を載せたトレイを持ってクルルズラボに行くと、まだクルルは眠っている。

 トレイをテーブルに置き、クルルの顔を覗き込んだ。

 かすかに胸を上下させ、規則的な寝息を立てるクルルにそっと触れる。

「がんばったな」

 ギロロはそう言うと、照れたようにくるりと背を向けた。そのまま振り返らずにラボを出て行く。


 起きていたのか? それとも何かいい夢を見ていたのか?

 寝ているはずのクルルの口元がかすかに笑った。


 もういいだろうとトレイを下げに行った時、ギロロはようやく目が覚めたクルルを見た。

 シャワーを浴び、栄養を補給して、満足そうにベッドでお気に入りの音楽雑誌を読んでいる。

 ギロロの姿を見ると、なぜか嬉しそうにく〜っくっくっくと笑った。


「飯を運んできてくれたのは先輩かい?」

「ああ、俺だが……?」

 クルルが聞くと、ギロロがなぜそんなことを聞く? といぶかしむ。


「どうせなら、最後まで面倒見てくれよ」

 そう言いながら、クルルがベッドから体を起こし、側に立つギロロの首に腕をかけ引き寄せる。

「何のことだ?」

 クルルに抱きよせられるような格好になりながら、ギロロは抵抗しなかった。

「睡眠欲、食欲が満たされたら、次は性欲だろぉ?」

 ギロロの耳元に熱い息とともにクルルは囁く。

「そ、それは自分で何とかしろ!」

 ギロロが真っ赤になって言うと、クルルが笑う。

「つれない事言うなって」

 笑ながらそう言って、ギロロをベッドに押し倒し、引きずりあげると馬乗りになった。

「一仕事終った後はいつもハイでね。先輩の太いアレ突っ込んでヒィヒィ喘ぎたい気分だぜぇ……」

「なっ!」

 ギロロに覆いかぶさり、卑猥な言葉を吐くクルルに、ギロロが絶句する。

 どこからともなく現れたアームが、ギロロを押さえつけ、クルルが鼻歌を歌いながらギロロの両腕を拘束した。黒い目隠しを取り出し、嫌がって顔を背けるギロロに無理やりつけさせる。

「大人しく目閉じてりゃ天国に行かせてやるぜぇ」

 そう言いながらギロロの首筋を舐め上げ、舌がギロロの体を蛇行しながら下がり、股間へ顔をうずめようとしたクルルの動きが止まった。

「解けッ! 目隠しも取れ!」

 ギロロが暴れて叫び、チッとクルルが面白くなさそうに舌打ちをする。この暴れようでは、口に入れたら大変な事になるのは間違いない。

 薬でも使うか……。とクルルが不穏な事を考えていると、意外な言葉が耳に入った。

「ちゃんと抱いてやるっ!」


 ギロロの口から出た言葉に、耳を疑う。


 オッサンが俺を?

 まさか?


「へぇ〜、どうした風の吹きまわしかね?」

 ギロロの言葉が信じられず、拘束を解こうとしないクルルにギロロが怒鳴りつけた。

「うるさいっ! 俺の気が変わらんうちにさっさとするぞ!」

「俺のこと、嫌じゃないのか、先輩」

 気分が高揚して、頭がふわふわする。

 クールな口調を意地で保つ。ギロロを拘束していたロープを解く手が震えそうになるのを必死で堪えた。

「本気で嫌なら、貴様に良いようにされる俺ではない。気に食わんが別に貴様が嫌いなわけではないぞ。以前貴様のおかげで俺の戦友が救われたことも知っている」

 自由になった両手で目隠しを取ると、ギロロの目がまっすぐにクルルを見つめている。

 その目と、ギロロの言葉が、まるで興奮剤のようにクルルに効いてくる。

「貴様は今回の最大の功労者だろう?」

「クラクラするね……。気持ち悪くて鳥肌がたっちまうぜぇ……。これはご褒美って訳かい?」

「褒美などそんなものはない。俺も一仕事終ってハイなんだ」

 ギロロはクルルをぎろりと睨みながらそう言って、クルルを強引に押し倒した。

「ふん……」

 クルルがギロロの言葉を鼻で笑うが、その顔にはどことなく嬉しそうな表情が浮かんでいる。

「んじゃ、ギブアンドテイクって事で、貸し借りなしだぜぇ」

「いちいち理屈ぽいことをいう奴だな。たまには黙って抱かれろ」

「く〜っくっくっく。了……クッ!?」

「返事はいらん」

 言いかけたクルルの唇を、ギロロがそう言って強引にふさいだ。


     



ENDE.



20100418 UP
初出 20060219発行 Keron Attack! Z

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