キャンディ・タママ










 囁く小さい声。

 気がついて欲しいというメッセージ。


「軍曹さん、好きですぅ」




 ガンプラに夢中になると、ケロロは周りが見えなくなる。

 知ってるけれど、試したくなる。

 ケロロはガンプラを作って、タママは側でお菓子を食べながらマンガを読んで。

 それは幸せなんだけど、ほんのちょっとだけ物足りない。

 軍曹さんもボクの事好きって言ってくれたのに。

 タママが不満そうな目でチラッとケロロの背を見る。

 軍曹さんもボクを好きって言ってくれたのに、軍曹さんはボクに何にもしてくれない。

 この間、ケロロはようやっとタママの事が好きだと認めてくれたのだ。

 これからの二人に胸を膨らませ、眠れないほど興奮したというのに。

 それなのに実際は。

 ケロロはガンプラを作って、タママは側でお菓子を食べながらマンガを読んで。

 二人の間は何も変わらない。

 好きだと行ってくれた時は天にも上るキモチで、もうなんにもいらないって思ったのに。

 欲張りになる。

 もっともっと、軍曹さんの事が欲しい。


 ボクがわがままなのかなァ……?

 どうして何もしてくれないんですかぁ?


 ボク、軍曹さんのこと、もっと欲しいですぅ。

 好きだと言ってもらってからも辛いと思わなかったですぅ……。

 もっと歯が浮くほど甘くて、めいいっぱい幸せで、トロトロにとろけちゃうかと思ったのに。

 なーんにも変わんない。


 だから小さな声で言ってみた。


「軍曹さん、好きですぅ」


 どうせ無視されるって判ってるけど。

 そう投げやりになったタママが切ない目をしてケロロの背を見る。

 自慢の尻尾もぐったりとして元気がない。

 ねぇ軍曹さん、答えてください。

 それだけでボクはすごく元気になれるのに。

 無意識のうちに流した涙がぽろっと零れ落ちた瞬間に、ケロロがこちらを振り向かず、ニッパーを持った手を軽く上げて返事をする。

「あ、我輩も」

 え……。

 タママの涙が驚きに引っ込んだ。

 え、ええ〜〜。

 あの軍曹さんがぁ〜〜?

 ガンプラに対するケロロの執着はとにかくすごい。この集中力さえあれば、地球征服も一日で出来てしまうのではないかと思わせるほどだ。(いや、できるですぅ)

 そんな軍曹さんが、あんな独り言みたいに小さな呟きに返事をしてくれたですぅ。

「なんか元気がないみたいだけど、どうかしたのかね、タママ君?」

 相変わらずこっちを見ようともせず、手を動かしながらだがケロロは言った。

 軍曹さん、もしかしてボクの事気になってたりしたりして……。

 そう思ってみてみれば、ケロロの手元のガンプラは珍しく組み立てが遅い。

 タママの口元に笑みが浮かぶ。

 ボクってほんと現金ですぅ。

 ほんの些細な事で落ち込んで、ほんの些細な事で微笑が浮かぶ。

 恋のチカラ。

「んも〜。軍曹さんたらガンプラばっかりしてぇ〜」

 タママはわざと拗ねたように言ってケロロににじり寄る。

 タママが近づいてくるのに嬉しそうなのは錯覚ではないはずだ。

「軍曹さ〜ん」

「んあ?」

 振り向いたケロロのだらしなく緩んだ口元に、ちゅっとタママが口付けた。

 ボクって大胆ですぅ〜。

 でも、この嬉しさを伝えるにはそれが一番良いと思ったのだ。

「ゲロッ!!」

 不意打ちのキスにケロロが目を白黒した。

「えへへ? びっくりしましたぁ?」

 タママが悪戯っぽく首をかしげ、にっこりと無邪気に笑う。

「きゃっほ〜い。軍曹さんとキスしちゃったですぅ。イェイイェイ〜」

 嬉しさのあまりぴょんぴょんと部屋中を跳ね回るタママを見て、ビックリしていた顔のケロロがふう〜っと大きくため息をついた。

「あ〜もう」

 仕方が無いなぁ。というケロロの顔。その顔を見て、タママの喜びがしゅうんとしぼむ。

「お、怒ったですぅ? ごめんなさい……」

「いや、怒ってはないんだけどさ」

 ん〜と腕を組み、何かを良いたそうなケロロの顔を見て、タママがますます落ち込んだ。

「ボク、なんか焦っちゃったんですぅ」

「焦っちゃった?」

 ケロロが首をかしげると、タママが泣きそうな顔をした。

「軍曹さんに相手にしてもらってない気がして」

 タママが思いきって、心の中にずうっとしまっていた不安を吐き出す。

「だってだって、軍曹さんもボクの事好きだって言ってくれた時はあんなに嬉しかったのに、軍曹さんとボク、何も変わらないですぅ」

 瞬きすると、タママがぐすっと鼻をすすった。泣くまいと堪えてタママの顔が歪む。

「……辛い、思いしてたんだ?」

 ケロロが優しい声を出すと、こくんとタママが頷いた。

 こんな事を言うと子供みたいだと思われると我慢していた。結局口に出してしまった自分を、不甲斐ないと自分で自分を責める。

「ごみん」

 ふいにケロロの口からでた言葉に、タママが伏せていた顔を上げた。

「我輩ね、タママが可愛いであります」

 タママが見たのは、ケロロの優しい眼差し。その眼差しを見て、タママは確信した。

 軍曹さんは、ちゃんとボクの事が好きなんだ。

 なのにボク、勝手に誤解して空回りしてる。

「ならなんでなんにもしてくれないんですかぁ?」

 キスや、その先をする事だけが、「好き」の表現じゃないと、先ほどのケロロの優しい眼差しが教えてくれた。でも、タママにはそれだけでは足りないのだ。

「可愛すぎて、考えすぎちゃってねェ……」

「何を考えすぎるんですかぁ? ボク全然判らないですぅ。欲しいものは欲しいって思っちゃダメなんですかぁ?」

 ケロロが言うと、タママが困ったようにケロロを見た。

「大事にしようって思ってたのに泣かせちゃっては本末転倒でありますな」

 そう、何をうじうじ考えていたんだろ、我輩。

 考える事なんて無かった。

 大人ぶって、タママはまだ子供だからと分別の有るフリをして、泣かせちゃ意味ないであります。

「恋って、もっと歯が浮くほど甘くて、めいいっぱい幸せで、トロトロにとろけちゃうものだとおもってたですぅ」

 悲しそうな声で言うタママにケロロの胸が痛む。

「でも、現実の恋は、辛くて、我慢できなくて、軍曹さんを困らせるだけで」

 恋は楽しいだけじゃない。それを知ったタママの言葉に、ケロロは慌てて口を挟もうとした。

 もう、軍曹さんに恋をするのなんかやめる。

 そう言われるかと思ったのだ。

「でもボク、軍曹さん好きなのやめないですぅ」

 きっぱり言い切ったタママの瞳を思わずケロロが見つめた。

 強い意思を持ったタママの瞳がキラキラと輝いている。

 ああ、綺麗でありますなぁ……。

 ケロロがタママのまっすぐな瞳に見とれる。

 タママはケロロの内心を知らず、その視線でケロロの心をまっすぐ射抜く。

「軍曹さんが好きですぅ!」

 なんて強くて、何てまっすぐで、なんて綺麗なんだろう。

 我輩のタママは。

「タママは、正直でありますな」

 思わず言葉が口からこぼれる。

「正直で素直な良い子であります」

「えへへ。なんで褒められたのか判らないけどうれしいですぅ」

 ほっぺをピンク色にして頭をかくタママにケロロがくすっと笑った。

 強くて、まっすぐで、綺麗で、そんでもって可愛いであります。

「我輩もそれを見習うであります」

 ケロロはそう言うと、そっとタママの頬に触れた。

「軍曹さん……」

 見たことのないケロロの真剣な瞳にタママが気をとられていると、ケロロの顔がだんだんと近づいてきた。

 自然に目を閉じる。

 タママは少し震えていた。安心させるように、ケロロが手をぎゅっと握る。

 お互いの吐息が判るほど近づき、やがて唇と唇が重なる。

 甘くて、暖かい液体で体中が満たされるようだった。

 満足感と優しい気持ちに、思わずタママの目の端から涙が一筋零れ落ちる。

 唇を合わせていたのはほんの数分だったのだろうが、忘れられないほど素晴らしい時。


 こんなに、こんなに。

 ボクは軍曹さんが好きで。

 我輩はタママが好きであります。


 お互いそう思っているのが伝わってきて、嬉しくて涙が出る。その涙はとても暖かい。

「甘い……であります」

 唇を離した後、ケロロがポツリと呟いた。

「ボクがですかぁ? 口の回りにお菓子でもついてたかなぁ?」

 タママがそう言って、口の周りをぺろりと舐める。

「違うであります」

「え?」

「タママは、とっても、甘い」

 ケロロはそう言って、またタママにキスをした。

 甘い甘い、キス。

「甘くて、美味しい」

 唇を離し、耳元で熱くケロロが囁くと、タママの体がかあっと熱くなる。

 ピンクの雲に乗ってるみたいに気持ち良い。

「だったら、食べてくださいですぅ。軍曹さんに、ボクを食べて欲しいですぅ」

 思わずタママはそう口走った。

 酔わされていると感じた。ケロロのキスに酔わされて、自分を全部差し出したいと思っている。

 ケロロがタママをベッドに寝かせ、耳元で囁く。

「歯が浮くほど甘くて、めいいっぱい幸せで、トロトロにとろけちゃうキモチ、教えてあげるであります……」

「軍曹……さん」

 またキスをされた。キスを繰り返すたび、キスは深くなり、甘さを増す。

 いつのまにかケロロの舌はタママの舌を絡めとり、タママはなす術もなくケロロに翻弄される。

「ふあ……」

 思わず甘い声を出すと、ケロロが笑った。

「まだキスしかしてないでありますよ」

「くすぐった……い」

 ケロロの唇が、タママの首すじを這うと、タママが体を縮こませて声を漏らす。

「タママ、力抜いて。我輩、タママが嫌な事しないから」

 ケロロの言葉に、タママが息を吐き出しながら力を抜く。

「キス、好きでありますか?」

 ケロロが問うと、タママが頷いた。

「じゃ、たくさんしよう」

 ケロロの舌がタママの舌に絡められる。

「んふ、んっ」

 タママがケロロのキスに精一杯になっていると、ケロロがそっと手を伸ばし、敏感な部分を指でなぞる。

「やっ」

「大丈夫」

 タママの体がピクンと跳ね、ケロロがタママを安心させようと素早く囁く。

「軍曹さん、ソコ……」

「ん、きもちいいでしょ?」

「あ。き……もち、いいですぅ」

 密かな裂け目のような場所をケロロが優しくなぞる。何度も執拗にそうしていると、やがてケロロの指先に湿り気と共にかすかなふくらみを感じた。

「軍曹、さぁんっ」

 その突起を粘液で濡れた指で摘むと、びくびくっとタママの体が跳ね、唇から漏れる切ない声が一層大きくなった。

「もっと、して欲しいですぅ」

「正直でありますな。ソコが良いんだけど」

 ケロロが苦笑して、タママの敏感な部分を指で軽くつまみ、扱く。

「あああうっ。なんか変に、変になるですぅ」

「ん」

 荒い息をして、いやいやと首を振るタママの股間にケロロが顔を埋めた。

 ピンク色の可愛い突起を口に含む。

 舌先で突付き、舐め上げると、タママの体ががくがくと震え、あまりの快感に、ただ軍曹さんと呼び続ける。

 やがてケロロが口に含んでいるタママを強く吸い上げた。出させるつもりなのだ。

「軍曹さん。それ、ダメ。それだめですぅ。ああっ、やぁっ。出ちゃいますぅ」

 ケロロはタママの言葉に、いっそう口の中のものを強く吸い上げる。

「あっ、あっ、あああああああっ」

 若いタママの体液が、思いきりケロロの口の中に出される。

 タママはケロロの頭を抱え、びゅつ、びゅっと欲望の証を出すたびに体を震わせていた。

 やがてそれが収まり、タママが落ち着くと、はっとした顔をしてケロロを見た。

「軍曹さん、ごめんな、ごめんなさい。おクチに。ひぁっ」

 タママが言いかけるのを構わず、ケロロがタママのもっと恥ずかしい部分に触れる。

 口の中に溜まったタママの体液を潤滑剤にして、タママの狭い中へ侵入する。

「やっ、そこ……」

 軍曹さんの指が、ボクの体の中に入ってきてるですぅ……。

「そこ、何で」

 自分でもあまり触った事がない場所をケロロに弄られ、タママが赤面する。息が荒いのは、ソコをケロロに嬲られると、信じられないほどの快感が体中を走るからだ。

「何でキモチイイの? って聞きたいの? それとも、なんでそんなとこ触るのって聞きたいの?」

 ケロロが意地悪く囁き、中に入れた指をぐるんとまわす。

「ほら」

「あああっ」

 くちょくちょといやらしい音がする。普段は外から見ると判らないほど閉じているのに、ケロロに指を入れられ、丁寧に解されているうちに広がり、ケロロを欲しがるように吸い付いている。

 あまりの気持ちよさになすがままのタママの手を取り、ケロロが自分へ導いた。

「我輩もこうなってる」

 タママの手に、ケロロのものが張り詰めて脈打っている。

「すごい……。ですぅ」

「タママのここにね、入りたがってる」

 くちゅ……とわざと大きく動かし、指を引き抜くと、タママのそこはものほしそうに少し口をあけ、ヒクヒクと痙攣した。

「ボクの中に?」

「いい?」

「ボクの中に、軍曹さんのモノ挿れてくださいですぅ……」

 タママの返事にケロロが頷き、自分のものの根元を掴んでタママに挿入した。

「トロトロになってるでありますな、ここ」

 ずるる……っとケロロのものがタママの中に入る。

 軽くタママの腰を掴んで揺すると、タママの中がケロロを締め付けてきた。

「ああっ、軍曹さんっ、軍曹さんっ」

「きつい?」

 タママが首を振る。本当は少しきつかったが、止めると言われるのが怖かったのだ。

「動くね」

 じゅぶ、ぐちゅ。

「あっ、あっ、あっ、あ……」

「キモチイイ?」

 頷くと、ケロロが意地悪く囁いた。

「なら、そう言って」

「あっ、軍曹さん、キモチ、いい、ですぅ。トロトロで、ぐちゃぐちゃで、あ。軍曹さんのアレがボクの中に挿って、キモチ、いい、ですぅ」

 ケロロの意地悪な言葉に、タママは素直に従った。どれだけボクが気持ち良いか知って欲しい。とでもいうかのように、素直に口に出す。

「あ……りがと。タママの中もすごく……いいであります」

 タママのトロトロにとろけるような柔らかい粘膜がケロロを包み込み、締め付ける。

 夢中になってタママに腰を打ち付け、こすって、えぐる。

「ひぁっ、軍曹さん、軍曹さん、キモチイですぅ。あっ、気持ちよすぎて、変に、変になるですぅ」

 タママがケロロにしがみ付き、ケロロは腰の動きを早めた。タママの穴から、ケロロのものが出入りするたび、透明だった粘液が白く泡立つ。

 ぐちゅ、ぐちゅ。と二人の粘膜がこすれあう音がする。

「やぁっ、やぁっ、軍曹さんっ!! あっ、あっ、あっ、あ。軍曹、さぁん……つ。ふぁああああああっ!!」

 タママの中で熱い塊がせりあがってくる。ケロロが激しく突き上げながらタママのものを擦ると、びゅるるるっと激しく白濁液が飛び出し、同時に体の奥がびくびくっと痙攣する。

 タママがイくと、タママの中がきゅうっと締め付けられた。

「く……」

 我慢していたケロロが、たまらずタママの体の奥深いところに出す。

 焼け付くような強い快感と共に、自分でも驚くほどの量の欲望の証がタママの中に注ぎ込まれる。

「軍曹さん、ボクの中で、いっぱい、びゅくびゅくって出てるですぅ」

「……ゴメン。我慢できなくて」

「ううん」

 ケロロの言葉にタママは首を振り、愛しそうにケロロの顔に手を伸ばして触れた

「うれしいんですぅ」

 初めての経験に精神的にも肉体的にも疲れただろうに、タママはけなげに笑う。

「軍曹さんが、歯が浮くほど甘くて、めいいっぱい幸せで、トロトロにとろけちゃうキモチ、教えてくれたですぅ」

 ケロロを見上げながら言うタママがあまりにも可愛くて、ケロロはタママを思いっきり抱きしめる。「わっぷ、軍曹さん、苦しいですよぉ?」

「我輩も」

「え?」

 耳元で囁かれる小さな言葉を聞き逃すまいと、タママはじっとケロロの次の言葉を待った。

「タママ、好きでよかったであります」

 ケロロの言葉にタママもぎゅっとケロロを抱きしめ。二人で固く抱き合いながらお互いの鼓動を聞いていた。





「軍曹さーん」

 タママが元気いっぱいにケロロの背中に飛びついてくる。

 ん? と振り返ると、タママが悪戯っぽい顔でケロロの耳元に囁く。

「またいっぱい食べて欲しいですぅ」

 ま〜ったく、いつの間にそんな誘いを覚えたんだか。

 ケロロが内心で呟く。

「ねぇ〜、ねぇ〜、食べてぇ」

 ケロロが大好き! と夢見るような瞳で熱く囁かれる。ほっぺをほんのり赤くして、大きな目をうるうるさせて……。

 困ったもんであります。

 だって、断れないでショ?

 タダでさえ可愛いのに、そんな事いわれちゃぁネェ〜。

 陥落寸前になりながらも、ケロロは無表情でタママの頭を軽く小突く。

「ダ〜ミ」

「ええ〜、なんでですかぁ?」

 とたんに聞こえてくるタママの抗議の声。

「甘いものは食べ過ぎると体に毒であります」

 そう……。二人で会議に遅刻して赤ダルマに睨まれるほど。

 昨夜も、タママのおねだりするままに答えていたら、案の定二人で大遅刻してしまったのだ。

 ここは大人の我輩がだね。大人の秩序ってモノをだね。

 内心でぶつぶつ呟くケロロにタママが無理やり口付けた。

「やだぁっ、お腹いっぱい食べて欲しいですぅ」

 ぷうっと頬を膨らませ、涙目でおねだりするタママ……。

「んも〜、仕方ないでありますなぁ」

 先ほどの決意は砂のように崩れ去り、ケロロの表情も溶けたアイスのように崩れる。


 やがてケロロは思い知る。

 美味しいものを食べ過ぎるとどうなるかということを……。





「いや〜、ちょっとネィ〜。家事の途中で腰を痛めましてェ。年のせいかな〜。いやいやオハズカ!!」 

 ベッドの上で、あからさまにうそ臭い言い訳をしながら、それを隠すようにわざと明るく振舞うケロロに容赦なく罵声が浴びせられる。

「腰を痛めただと!? 貴様それでも軍人かぁ!」

「イヤァ。面目ない」

 熱く鬱陶しい叫び声にケロロは首をすくめる。もっと体を鍛えろだの、気合が足りないだのという説教を聞き流すと、精神的にもっと嫌な相手がゆるゆると近づいてきた。

「く〜っくっくっく。隊長が腰を痛めたなんて、一体何の運動したんだよ? ク〜ックックック」

 ベッドの上でニヤニヤするケロロの顔よりもっとにやついた顔をしたクルルが言う。

 なにシタかなんて、知ってんだろうがァ〜〜〜〜。

 と、叫びたいのを堪え、カツを入れるでもなく冷やかしでもなく、純粋にお見舞いに来てくれたドロロにターゲットロックオンする。

「ドロロく〜ん、君、針治療の心得あったよねぇ〜、頼みたいんだけどなァ」

「お気の毒でござるな。拙者の針できっと良くなるでござる」

 ケロロの思惑通り、ドロロはにっこり笑って承諾してくれた。

 フォッフォッフォッ。これでタママとの愛の生活も安泰でありますよォ〜。

 邪悪な笑みを無表情の下に隠してほくそえむとふとギロロが口を開いた。

「貴様、覚えてるか? ケロロが針治療と称して俺たちに針をさそうとしたのはまいったぜ」

 この赤ダルマ、よりにもよってこんな時に余計な事を!?

「こ、子供の頃の話じゃないのぅ。それにそれがきっかけでドロロが針治療の勉強したんだからいいんじゃない。ネッ?」

 ケロロが慌てて話に割り込む。手を振りながらドロロを見ると、暗黒オーラに包まれた幼馴染がうつろな目でケロロを見て、ひく〜い声が口から漏れる。

「……そういえばケロロ君、適当な知識でボクに針刺したっけね。すっごい痛かったよ。ついでに治療だとか言って、ボクの背中にあっついお灸を沢山すえた事もあったよね」

「ど、ドロロ君、ナニその大量のよもぎは、あっ、ヤミテ。あっついあっついあっつい。キィ〜ヤァ〜〜〜」

 ケロロの悲鳴が部屋の壁に吸い込まれる。

 甘いものも食べ過ぎるとこうなる。ということを身をもって示しながら、今日もケロロはタママの甘い誘いとお灸の恐怖の狭間で揺れ動くのであった。




ENDE



20100720 UP
初出 20070714発行 ケロロ×タママアンソロジー HappyLovelyCooking
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